病院ブログ

フィラリアってなに?

わんちゃんのフィラリアの検査をしましょう!フィラリアの予防をしましょう!

春を過ぎたあたりから頻繁に聞くフレーズですよね。

今回は「なんとなく知っているけどフィラリアっていったい何?」を説明します。

少し長くなりますので、気合を入れて書いていきたいと思います!

 

まずフィラリアとは、糸状虫科の寄生虫の総称です。

熱帯アジアやアフリカには人に寄生して重篤な症状を出す種類もいますが、犬に寄生するのは犬糸状虫という種類のフィラリアです。

犬糸状虫といいつつ、確率は低いですが猫にも感染し、感染が継続すると猫の方が重篤な症状を出しやすい傾向にあります。

このフィラリアの幼虫、元々は蚊の細い口に吸いこまれるほど小さいのですが、成虫になると最長30㎝、太さ1.5㎜ほどの大きさに成長します。

※成虫は冷や麦にとても似ています…

 

感染経路は以下の流れです。

①蚊がフィラリアに感染した犬の血を吸う

②その犬の血液と一緒にフィラリア幼虫も蚊に吸われる(蚊の体内にフィラリア幼虫が移動する)

③その蚊が別の犬を吸血しに行く

④別の犬を吸血する時にフィラリア幼虫が入れ違いにその犬の血液に移動する

⑤犬の体内に入ったフィラリア幼虫が体内で成長する

⑥最終的に心臓の右心房と肺動脈に住み着いて繁殖する

⑦繁殖したフィラリア幼虫が体内を巡って最終的に心臓に戻って過密状態になる

フィラリアが住み着く心臓の右心房は、全身を巡った血液が帰ってくる場所です。

そして肺動脈は心臓から肺に行き新鮮な酸素を受け取って全身に巡っていくための血管です。

ここに異物(血栓やフィラリアなど)があると、心臓に戻る血液に渋滞が起こったり心臓内での血液の逆流が起きたり、また全身に血液とリンパ液や酸素が巡るのを邪魔します。

慢性フィラリア症はこれらの症状が長く続くことにより、徐々に全身にダメージを与えます。

症状としては、下肢から全身のむくみ、運動を嫌がる、食欲不振、毛艶の消失、血尿、咳、腹水、臓器機能不全などです。

肺に行く血管を邪魔するので、全身を巡る酸素が足りなくなるチアノーゼという状態になり、常に酸素不足で呼吸が苦しくなります。

症状が進行するとじっとしていてもゼェゼェした呼吸になったり、歩いているだけでも酸素不足で急にパタンと倒れてしまったりします。

更にフィラリアが何かの拍子に動脈にギュッと詰まると、急性フィラリア症を発症します。

急性フィラリア症は心臓の塞栓症なので、異変に気付いて数時間で死に至る場合も少なくありません。

急性の場合は外科手術でフィラリアの摘出をする事になりますが、危険度の高い手術です。

なおかつ手術の成功率は50%と言われており、成功してもその後の経過次第で無事に生還できる率は更に50%と極めて低いです。

このようにフィラリアは大変危険で怖い病気ですが、予防薬をしっかり飲む事で感染リスクをほぼ0%にする事が出来ます。

次に大事になってくるのが薬を飲む期間です。

フィラリアは蚊が媒介すると説明しましたね。

薬は蚊の出る時期に飲むのですが、ここにも実は間違いやすい落とし穴が隠れています!

薬はフィラリア症感染を予防するため予防薬と呼びますが、薬自体は実は感染しているフィラリア幼虫を駆除するための薬なのです。

フィラリアとは決まった成長段階がある虫で、薬が効く時期と効かない時期があります。

体内に入ってからある程度育ってからでないと薬が効かないのです。

そのため、蚊が媒介するからと言って薬は蚊が出ている時期だけ飲むものではありません。

蚊がフィラリアを媒介し始め時期から体内でフィラリアが薬が効くサイズに成長するまでの間で飲ませてもらう必要があり、それがこの周辺の気候では5月から12月の間になるわけです。

なので日本中が5月~12月に飲んでいるわけではなく、沖縄は1年中フィラリアの予防薬を飲みますし、北海道はもっと短い時期で済みます、。

蚊の吸血活動時期に合わせてフィラリア薬は飲む期間を変えているのです。

 

「蚊が出ていないから薬はもう飲まないでいい」といって10月や11月に薬をやめてしまう方がおられますが、これは大きな間違いです。

最期の12月に薬を飲ませないと、もしかしたら体内にいるかもしれないフィラリアの幼虫が翌年の薬を飲ませ始める頃までに体内で成長し、駆虫薬が効かない状態となり、フィラリア感染犬となってしまいます。

そうなるとフィラリアの寿命4~5年間、ずっと急性フィラリア症のリスクを持ちながらの治療が必要となります。

命に係わる重大な病気であるフィラリア症、正しい知識を持ってしっかりとお薬を飲ませてあげてくださいね。